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9時過ぎに西粟倉村に入る。雨が降っていた関係上,車庫で休ませてもらおうと思い,農作業中だったおじさんに声をかけて事情を話して断る。すると人のよさそうなおばちゃんがこっちへ歩いてきたので,休憩がてらいろいろと話す。
「ここはもう西粟倉(にしあくら)ですよね」
「ええ」
「実は歩いてずっと旅しているのですが,私の祖母と母がこの村の出身でして…。有元という名字なのですが…」
「ああ,大原の?」
「いえ,大原の方は本家で,うちは分家の方でして」
有元家は西粟倉村の近くの大原町というところでは一応名前が売れている名門(?)で,今でも本家は代々続いているそうである。ちなみに祖母は分家の筋だそうである。
「じゃあ西粟倉村(にしあくら)は初めて?」
「はい,祖父母と母が生まれ育ったところですから。一度は訪れてみたくて」
祖母が私に西粟倉村のことを話すときは,必ず「にしあくら」と発音するので私もそうしてみたのだが,確かに地元の人の発音も「にしあくら」であり,やっぱり祖母はここ西粟倉村で育ったんだなぁなどと至極当り前のことをしみじみ実感してしまった。
このおばちゃんとはずいぶん話したが,私の祖父の野々上の家系が代々神主だったことや私の祖父のことも知っており,何か懐かしいところへ帰ってきたような錯覚に陥りかけてしまった。
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